【提言】ふるさと納税の活用について-現在の課題と新たな提案【京都市のふるさと納税】

2008年に創設されて以来、今や私たちの暮らしにすっかり定着したと言っても過言ではない『ふるさと納税』。納税する立場からすると、とても魅力的な制度です。

しかし、京都市においては、寄付をいただいている金額よりも、他自治体へ流出している金額の方がはるかに上回っていることをご存知でしょうか?

財源が流出することで影響を受けるのは、市民の皆さまにほかなりません。全国的に人気・知名度の高い「京都」だからこその魅力を活かして、ふるさと納税制度を活用することの重要性を訴えました。

 

(令和元年10月発行・京都党 市会議員団ニュースvol.8より)

ご存知ですか?京都市の深刻な財源流出!

◆年々増加する流出額

京都市のふるさと納税による財源流出が、深刻な状況になっていることをご存知でしょうか。
平成30年度はマイナス28億円
令和元年度はマイナス36億円
令和2年度では6月時点で既に40億円以上が流出しています。

◆寄付額が増えても、焼け石に水

寄付額は平成30年度の1.8億円から令和元年度は2.5億円と7,000万円の若干のプラスに転じてはいますが、余りにも流出額が大きいため焼け石に水の状態です。ふるさと納税によって流出している市税は,本来は,京都市民の方々のために使われるべき貴重な財源です。京都市の財政状況を考えれば目標収入額を40億円以上と定め,まずは収支ゼロを早期に目指すべきです。

まだまだあるはず?! 返礼品目

◆京都ならではの産品を活かしきれていない

このような状況を受けて、何とか収入を増やそうと令和元年からは返礼品拡充に力を入れており、その数は現在460品目以上まで増やされています。中でも、新型コロナ感染拡大前では旅行クーポンや宿泊クーポンは大変人気の返礼品となっていました。この積極的な姿勢は評価できるものですが、まだまだ京都の代表格の産品が入っていません

◆消費者目線に立った拡充を!

返礼品で重要視すべきは、消費者目線に立った拡充であり,選ばれる返礼品でなければ意味がありません。京都には全国の方々が欲しいと思うものが数多くあります。例えば京都のお土産ランキング上位の和菓子や洋菓子、お漬物やSNSで話題の食品などが、品目にはまだほとんど入っていません。全国的にも人気の高い京都のラーメン店の商品や,パンなども魅力的な品目となるでしょう。こういったものを返礼品に加えれば,企業にとってもリピーターになってもらえる可能性もあり、十分にメリットがあります。

検討したい、新たな攻めの一手!

◆あなたのお名前が京都の街並みに刻まれる…?!

また、ふるさと納税の仕組みの中で、ネーミングライツを行う取組みも考えるべきです。ネーミングライツとは、施設やイベント等について通称を命名する権利、いわゆる「命名権」のこと。例えば、歴史ある街並みの石畳を新しくする場合、そこにスポンサーである皆さまのお名前が刻まれるというのも一つのアイデアです。

◆大学のまちとしての強みを活かす!

京都と言えば「大学のまち」と言われるくらい、多くの大学が所在しています。卒業生の方の中には、母校へ思い入れをお持ちの方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、大学のまちを強みとして活かし、ふるさと納税の仕組みを使った、母校と連動した寄付金の制度を設けるのも一手だと考えます。寄付金は学生たちを支援するため、奨学金や大学周辺の環境整備などに用います。

◆全国的に増えつつある無形の返戻品

そして最近では、物ではなくサービスを返礼品に加える自治体も増えてきています。例えば、お墓の清掃代行サービスなどがそうです。今後のウィズコロナ時代に、京都を訪れてみようという足掛かりとなるサービスも拡充すべきであり、観光タクシー利用券やオンラインツアーなども考えるべきでしょう。これからはサービスの付加価値を高めることが大事だと考えます。

「京都ファン」を醸成する仕掛けを

◆事例・北海道東川町の取組み

京都市へのふるさと納税の継続性を高めるために、寄付していただく方々とのつながりを強くし,京都のファンになっていただくという観点も重要です。そこで、北海道東川町の株主優待制度を模倣した仕組みが大変秀逸であったので、今後の方向性を考える上での一例として御紹介いたします。この制度は寄付してくれる方々をまちの株主と位置付け,一緒にまちを育んでいくというものです。

◆二条城で株主総会?! ポテンシャルを活かそう!

京都市の株主になった場合,株主証が発行され,特別市民という位置付けになり,京都に訪れた際には,まちの公共施設が市民価格で利用できる株主の割引宿泊プランがあるなど,様々なサービスが受けられます。また,京都市のまちづくりに参加する株主総会を開催し,進捗や財政状況など直接聞くことができる機会を設けます。その株主総会は二条城で開催するなど,株主にとって参加したい,訪れたいと思えるしつらえを用意することも重要です。もちろん総会で意見があれば直接伝えることができます。
まちに愛着を持っていただき継続的につながることで関係人口が増え、ひいては移住の促進にもつながるということが、株主制度に期待する大きな効果の一つです。全国的にファンづくりに成功している京都ならではの非常に有効な施策になると考えます。

 

<令和2年10月1日 代表質問にて提言>